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楽曲分析

Analysing

#1 家入レオ『Silly』

2015.9.16 / 楽曲分析

『Silly』

2014年11月19日リリース
作詞:家入レオ
作曲:西尾芳彦
・TBS系テレビドラマ『Nのために』主題歌
・iTunesソングランキング総合1位
・レコチョクシングルランキング1位
・週間USEN HIT J-POP/洋楽ランキング1位
・第83回ザテレビジョンドラマアカデミー賞ドラマソング賞受賞

——— いつもどのような事を考えて作曲、プロデュースに臨まれるのでしょうか?
西尾 とにかく、リスナーが耳で聞いた時にどう感情が揺れ動くか常に考えています。
『Silly』に関しては、強烈な、痛いほどの思いを伝えるという事が念頭にあったので、ドロドロとした感情をいかにストレートに伝えるかを考えました。
——— 作曲者から見て、この曲の特徴としてはどのような事が挙げられますか?
西尾 『Silly』は構成的には3部構成(Aメロ、Bメロ、サビ)+Dメロ(大サビ)になっています。
コード的には、メジャーキーでありながらI(T/トニック)をほとんど使っていないところが大きな特徴です。
Iは通常、始まりと終わりに使用される安定した響きですが、それを使わない事で浮遊感が常に漂っていることになります。
【『Silly』に登場する主なコードとその大まかな役割】 ※key of F
コード Fmaj7 Gm7 Am7
和音記号 Imaj7 IIm7 IIIm7
機能名(読み) T(トニック) SD(サブドミナント) T(トニック)
役割 明るく安定した響き 浮遊感のある響き 安定した響き

B♭maj7 C7 Dm7 Em7-5
IVmaj7 V7 VIm7 VIIm7-5
SD(サブドミナント) D(ドミナント) T(トニック) D(ドミナント)
浮遊感のある響き 不安定な響き 暗く安定した響き 不安定な響き
——— メロディに関して特に気を付けた事はありますか?
西尾 一番に挙げられるのは、Iを使わない事によってキーが分かりづらくなる事です。
なのでそこを意識してメロディを作らないととっ散らかった印象の曲になってしまいます。
それに加えて、メロディによってAメロ、Bメロ、サビ、Dメロ・・・と、各ブロックを差別化する事は常に意識しています。
——— メロディの使い分けで差別化をされたということですか?
西尾 そうですね。差別化の方法はいくつかありますが、『Silly』は各セクションいずれもIVのコードから始まるので、コードに頼った差別化は難しい部分があります。
逆に考えれば、セクション毎の差別化ができるだけのメロディの引き出しがあれば、曲全体の統一感を生みだしやすいとも言えますね。
——— では具体的な差別化の方法を中心にAメロの解説からお願いします。
西尾 Aメロは構成としては前半2小節のQuestionに対してその後1小節分のAnswerの作りになっています。 二つの対比のさせ方ですが、Questionの部分が音符が詰まったフレーズなので後半のAnswerの部分はほとんどを休符にしています。
繰り返しフレーズを使用した前半に対して、後半は繰り返しは使用しないフレーズで・・・といった見方もできますね。
聞き直した時に、そのメロディがどういった役割で全体ではどういった構成になっているのか、確認しながら作る事が大切だと思います。
——— 差別化の他にもメロディを作る際に気を使う事はありますか?
西尾 メロディからバックのコードを予想しにくい、コードに引っ張られていないメロディにするという事は常に意識しています。(※ヴォイス理論では逆にメロディがコードの流れに引っ張られている状態を「コード鳴り」と言います。)
加えて、休符の使い方もテクニックの一つです。意表を突くタイミングで休符を入れ込むわけですが、この休符が出てくると聞き手は、「あ、止まった。」と心の目を開かざるを得なくなります。 このフレーズを2回繰り返す事で、3回目(吐息の隙間で名前を呼ばれ、の部分)に入った時は聞き手は自然と「次も止まるかな?」といった耳になっているはずです。
こういった休符の使い方とリピートを用いる事で、聞き手の耳、注意を惹きつける事が可能です。

(Bメロへ続く)
※レッスンではBメロ以降も解説しています。

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