#4 家入レオ『太陽の女神』
『太陽の女神』
西尾芳彦プロデュース
2013年11月6日リリース
作詞:家入レオ
作曲:西尾芳彦/家入レオ
編曲:三輪コウダイ
・フジテレビ系ドラマ『海の上の診療所』主題歌
・第55回日本レコード大賞 優秀作品賞受賞
・オリコンウィークリーランキング7位
大きな世界観の中の細やかな感情の動き、聞き終わった後の爽快感を意識して制作に臨みました。登場するコードやコード進行に関しては非常にシンプルなものとなっています。
長めの休符から始まるAメロです。歌詞の字数は多いですが、細かなアクセント、シンコペーション、そのコンビネーションを盛り込む事で生き生きとしたものになっています。
譜面は伸ばす部分をピックアップしましたが、それぞれを(譜面に書ききれない)適切な長さ、適切な切り方で歌ってもらっています。 音符の切り方一つとっても、気持ち長めor短め、ぴったり切る、余韻(息の部分)を残して切るなど様々なやり方があります。CDをよく聞いてみてください。
強弱についても、一音一音、強く歌っている箇所、弱く歌っている箇所があります。
メロディ先行で歌詞は後からつけたものですが、歌詞自体の意味はもちろん、メロディのグルーブ感を損なわないような語呂のフレーズになっています。
前半2小節はコードがI(B♭)、後半はVIm7(Gm7)に動いていますが、いずれもほとんど同じ性質のメロディがついています。 コードを動かす時はメロディは変えないという手法です。 (#1『Silly』楽曲分析参照) こういった事を意識せずなんとなく歌ってしまうと、ロックのニュアンス、グルーヴ感が表現できません。この部分に関しては8分音符の頭の位置にアクセントがくるなどある程度の法則はありますが、それだけを覚えても他の曲への応用が難しいですし、そういった事を暗記して頭で考えながら歌うのは相当に大変です。
レッスンやレコーディングの現場では僕がその場で歌って細かなニュアンスを覚えてもらう事が多いのですが、一番の近道は日頃からたくさんの楽曲をカバーする事です。洋楽を中心に、お手本になる楽曲、アーティストはたくさんいます。
■Lee DeWyze(リー デワイズ) – Sweet Serendipity
■Hunter Hayes(ハンター ヘイズ) – I Want Crazy
■Jason Mraz(ジェイソン ムラーズ) – Love Someone
スローテンポのバラードやR&B系の歌を得意とするシンガーの方も多いと思いますが、是非、上に挙げたようなアーティストの楽曲もカバーしてみてください。その際はコードやメロディの作りなどもそうですが、強弱や音符の長さを含むメロディの歌い方、ドラム等のリズム隊との関係にも気をつかってカバーに取り組んでみてください。
続くサビも休符から始まるメロディです。
こういったアイデアもたくさんの楽曲をカバー、分析させていただいて培ったものになります。
参考にさせて頂いた楽曲の一つがCrowded House(クラウデッド・ハウス)のDon’t Dream It’s Overです。
この楽曲もAメロの後Bメロに行かずにすぐサビがくる構成になっていて、いずれも休符から始まっています。どこからメロディが始まるかが予想しにくく、歌が入ってきた時にドキッとするものがあると思います。
当然同じメロディは使えないわけですが(笑)、手法とその効果についてはこういった素晴らしい楽曲から大いに勉強させてもらっています。
サビはQ&Aの構成になっていますが、Questionが4小節、Answerが2小節の長さになっています。
通常はAnswerの部分も4小節で作ると思いますが、ここをあえて短くする事で畳み掛けるような印象を与えています。
サビの出だしはかなり高い音程ですが、歯切れよく、さらに滑舌もしっかりさせて歌わないといけないのでレコーディングでもかなり苦労した部分です。Aメロと同じく、ここも作詞の段階からそういった歌い方を想定した言葉を選んでいますね。 ここも音符を繋げて柔らかく歌ってしまうと、後半、Answer部分のゆるやかなメロとの対比があいまいになり、結果、Q&Aの差別化にも支障が出てきます。
作詞、作曲、歌、楽器・・・シンガーソングライターはやる事が多くて大変ですが、結局は全部が繋がっているわけですね。